「損得を最優先に考えてしまう自分に嫌になる…」
そう思えたのなら、実はラッキーかもしれません。損得勘定は人生においてマイナスの影響が非常に大きく、放置すると人生を壊してしまうとも言われています。
しかし、損得勘定で考えてしまうことがあるという気持ちもわかりますし、そうなるのは仕方がないと思える部分もあります。人間なら損得勘定が働いてしまうのはむしろ自然なことだと言えるかもしれません。
ただ、人生を豊かにする、人生を良い方向に変える力は、損得勘定を超えた選択を取れるようになった時だとも言われています。
損得勘定を持つ理由と損することのメリット
損得勘定は人間の本能に標準装備されている
これを書いている僕自身、損得勘定がないわけではありません。むしろ人より損得勘定は強いかもしれません。
そんな自分を変えるために、見返りを求めるのではなく、自分の時間を無駄にするかもしれないけど、自分の経験や知識を誰かの役立つ形にして提供してみよう。そんな損得勘定を超えた行動をするためのレッスンとしてブログを運営している部分があります。
だからこそ分かるというとおこがましいですが、人間は損をしたくないと思う生き物だよなってことを痛感している真っ最中です。この痛みの正体は行動経済学という学問で「損失回避バイアス」という理論としても証明されています。
「多くの人にとって『利得の喜び』と『損失の悲しみ』を比べると、後者のほうが大きく感じる」という人間の特徴のことだ。2002年のノーベル経済学賞受賞者で行動経済学の先駆者であるダニエル・カーネマンらによって提唱され、その研究によれば『損失の悲しみ』は『利得の喜び』の2倍以上とされている。
暮らしに活かす行動経済学 ! 損の悲しみが人を動かす「損失回避バイアス」 | マネー | おすすめコラム | 大和ネクスト銀行今回は、「損失回避バイアス」という行動経済学の理論を取り上げて、資産運用や日々の暮らしにどう応用できるかを考えていきます。
人間は利得の喜びよりも損失の痛みのほうが2倍強く感じる生き物なのだそうです。
10,000円を貰うのと10,000円を損するのとでは10,000円を損するほうがインパクトが強いという理論です。いかがです?あなた自身に置き換えると「確かに…」となるのではないでしょうか?
僕も同じです。確かに…って思います。
だから、損をしたくないと思うのは自然だし、損をしないように損得勘定を考えて行動することも自然なのです。
損をしないことを選ぶことの損失
損失を回避したいって気持ちは、人間なら誰しもが持っています。あなたが持っているのは当然だし、僕も当然のごとく持っています。だから損を回避するのはダメなことだよと偉そうなことは言えるわけがありません。
ただ、その上で、損をしないことを選び続けると、実はもっと大きな損をするかもしれないというリスクは知っておいても良いのかな…なんて思うんです。
どういう事かと言いますと…
- 大きな得の第一歩目は小さな損
こういう法則性があるのもまた事実だからです。
例えば、友達。友達がいると、日々のいろいろなことが楽しくなります。食事を行くにしても、悩み事を相談するにしても、くだらない事を話すにしても、友達という存在がいるからこそ得られる体験ですし、面白い、楽しいと思える時間でもあります。
では、誰かと新しく友達になるには?となると、どちらからか話しかけるというアプローチは欠かせません。しかし、話しかけると断られるリスクは常にあります。勇気を出して話しかけても良い返事があるとは限らないし、その人が良い人だという保証はありません。
そこで損を避けることを優先するなら話しかけないという選択肢がベストになってきます。
話しかけなければ断られる痛みを避けることはできるし、変な人に会うリスクも減らせます。しかし、それを続けると人間関係は良くて固定化、悪ければ縮小していきます。
損をしてもいいのでアプローチするという選択肢を取らないと、多種多様で面白い関係性に富んだ人間関係が手に入る未来が訪れなくなります。
お金でもそうですよね。お金を増やしたい。そのために投資という選択肢がある事を知る。でも、投資をするにあたって初めから上手くいくわけがありません。初めは損をしたりしながら、勉強をして、少しずつコツがつかめるようになるものです。
損なんて嫌だ!ってことなら投資をしないのが最適な選択になります。しかし、投資で財を成した方たちのように、大きなお金を持つことはできません。
小さな損を避けると、手に入るかもしれない大きな得を手に入れることができなくなります。
加えて…何よりも大きな問題は、損失を避け続けると、幸福感を得にくいという部分にあります。
損失を回避すると幸福感は減る
人間というものは不思議なもので、損失を回避しただけでは幸福になれないようなのです。むしろ、損失を受け容れて、無償で行動した経験がある人のほうが長期的な幸福度が向上したというデータもあります。
それを教えてくれているのが、下記の自分は損をしつつも利他行動を取った効果を検証した報告です。
無償での行動と幸福度に関する主要研究一覧
著者 | 発表年 | 研究タイトル | 主な結果 |
---|---|---|---|
Aknin, B. B., Barrington-Leigh, C., Dunn, E. W., Helliwell, J. F., Burns, J., Biswas-Diener, R., … & Norton, M. I. | 2013 | Prosocial spending and well-being: Cross-cultural evidence for a psychological universal | 他者への支出が自己への支出と比較して幸福度を約15%向上させる効果が確認された。アメリカ、カナダ、インドの異文化圏でも一貫して観察された。 |
Dunn, E. W., Aknin, L. B., & Norton, M. I. | 2008 | Spending Money on Others Promotes Happiness | 他者にお金を使った参加者は、自己に使った参加者よりも翌日に平均で7.5%高い幸福度を報告。 |
Lyubomirsky, S., Sheldon, K. M., & Schkade, D. | 2005 | Pursuing Happiness: The Architecture of Sustainable Change | 意図的な活動、特に利他的な行動が持続的な幸福感の向上に寄与することを示した。 |
Post, S. G. | 2005 | Altruism, happiness, and health: It’s good to be good | 利他行動が幸福感および身体的健康に正の影響を与えることを発見。 |
Ong, A. D., Fuller‐Rowell, T. E., & Heffer, T. | 2013 | Prosocial behavior, well-being, and happiness | 定期的な利他行動が長期的な幸福感と自己満足度の向上に関連していることを確認。 |
自腹で誰かのために何かをしたほうが、幸福度は高くて持続しやすいということが分かっているそうです。
つまり、損得勘定で”損をしたくない”という気持ちを優先して行動をしていると、損をするという結論を回避できるが、長持ちする幸福感を味わう体験を損なうことになります。
今より幸福感を感じ、それを持続させるなら、目先は少々損をしてでも自発的に誰かのために行動をするほうが良いよってことになります。
損得勘定の経験値が変化に抵抗する
いかがでしょうか?
ここまで読んで「言いたい事はわかる自分」と「それでも損したくない自分」のせめぎあいがあなたの中で起きているのではないでしょうか?
損をしたほうが良いんだぞってことを言っているように聞こえる僕の意見を鵜呑みにしないように、「あなたを利用する人が寄ってくるぞ」とささやく内なる声も聞こえてくるのではないですか?
当然です。今までタブーとして禁止していた行為をオススメするようなことを僕は書いているのですから、心理的抵抗は起きて当然です。そのアラームがあなたの中で鳴るからこそ、損失を未然に防げていた場面も多々あると思います。
ポイントはそれを含めた経験の違いがあなたの中に存在しているということです。
- ”未然に損失を防げているかもしれない”という経験
- ”損失を受け容れて損しても良いと行動して得をした”という経験
この2つの体験が同量で存在しているわけじゃありませんよね?
どうしても偏りがあると思うのです。
そして、体験は自分の中ではゆるぎない真実ですから、どうしても体験があるほうを優先して考えてしまいます。だから、前者の損失回避を優先する行動パターンに固執しがちになるし、変えることは難しくなります。
だから、損得勘定ばかりじゃダメだよな…でも、なかなか変われないんだよな…というギャップがあなたの中に生まれることになります。
つまり…何が言いたいのかはもうお分かりだと思います。
損得勘定での行動をやめるために…
今より豊かになり幸福度が高い人生を送るなら損得勘定だけで考えないことが大切だよってことを書かせてもらいました。残酷かもしれないけど、損失回避を優先しすぎると今より幸福にも豊かにもなれないようです。
でも、損失を回避したいと思うのは人間なら誰しもが思う事だし、損失を回避できた!という成功体験があればあるほど、損してもいいから行動を起こしてみよう!と思えないはずです。
でも、損を受け容れて一歩踏み出さないと未来は変わり映えしないというのも事実です。
では、どうすればいいのか?
許容範囲での損を敢えてやってみるということをお勧めします。つまりはテストをしてみるということです。それが利他的な行動であればなおよしです。
例えば、コンビニで買い物をした時にお釣りの小銭を募金するというのも良いと思います。慣れない時はこれにも強く抵抗を感じると思います。でも、やってみると役に立てたならうれしいな…という気分にもなれるはずです。
例えば、誰かの役に立つ記事をブログで書いてみるというのも、損をしながらの利他的行動になります。それが何かに結び付くのかどうかはわかりませんが、誰かのために記事を書くと幸福感を味わえるのは僕が保証します。
損得勘定で判断してばかりで良いのか…?という疑問を持つこと、損得勘定ばかりで行動するのは辞めようと思う事は、とても素敵な気持ちの変化だと思います。
その気持ちの変化をただの気まぐれにしないためにも、ぜひ何か行動に移してみて貰えたらな…と思います。
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